ニュージーランドの本

児童文学を中心に、ニュージーランドの本(ときどきオーストラリアも)をご紹介します。

★Sylvie's Big Adventure(仮題『ちっちゃなカタツムリ、シルビーの大旅行』)

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【基本情報】
書名:Sylvie's Big Adventure
  (仮題『ちっちゃなカタツムリ、シルビーの大旅行』)
作者:ドナ・ブレイバー(Donna Blaber)  出版元:Lighthouse
発行年月:2020年9月  ページ数:44(本文37 挿絵なし)
サイズ:20.5×13cm(ペーパーバック)
ISBN:9781927229675  対象年齢:小学校低学年から

*試訳(全訳)あります

【概要】
 カタツムリの女の子シルビーが、おもちゃのトラックにしのびこんで外国旅行に! ニュージーランド発の低学年向き読み物。

 【あらすじ】
 民家の庭で暮らすカタツムリの女の子シルビーは、冒険を夢見ている。遠いところへ行ってみたくてたまらない。でも、家族や友だちは、だれもそう思っていないようだ。カタツムリというのは、遠出なんて、まずしないものだから。
 ある日、庭で遊んでいたシルビーは、友だちのプルーとともに、人間の男の子ベンに見つかっておもちゃのトラックに乗せられ、庭や畑を横切って、はるばる郵便受けまでつれていかれた。プルーはおびえてしまったが、シルビーは胸がときめく。おまけに、ベンは、もうすぐ家族で外国旅行に行くとのこと。行き先はロス、ロンドン、そしてパリ。シルビーはこっそり計画を立て、ついていくことに。
 ベンたちの出発の前の晩、シルビーは両親に手紙を残して家を出ると、ベンのトラックに忍びこんだ。計画は大成功。スーツケースに入れられて、眠っているうちにロスに到着。ベンが持ち歩くトラックに乗ったまま、3都市を周遊する。
 ロスとロンドンでは、それなりにハラハラドキドキもあったけれど、無事に切り抜けた。途中でベンに見つかってしまうが、かわいがってもらい、食べ物も調達してもらえたので、かえって幸運だった。
 ロンドンでは、公園で出会った地元のカタツムリから、フランス人はカタツムリを食べると聞かされる。次の訪問地はパリだけど、パリがフランスだとしたら、どうしよう?
〈*以下略〉

【感想・評価】※結末にふれています。
 カタツムリらしいゆったりとした雰囲気が心地よい物語。37ページと短い中に、ほのぼのとしたユーモアと、ほどよいスリルが無駄なく詰まっています。ベンとの再会の場面がクライマックス。遠くへ旅をした主人公が、何かを得て、少し成長して帰還。最後はふるさとの庭の描写が、幸せな読後感を残します。
 挿絵が全くないのが残念。挿絵つきの読み物として、日本の読者に届けられたらうれしいです。

【作者紹介】

Donna Blaber

 ニュージーランド最北部に近いファンガレイ在住の作家。1970年生まれ。客室乗務員を経て、ライターや編集者として活躍。おもに旅行雑誌の記事や、旅行ガイドを手掛ける。その後、オークランド工科大学でクリエイティブライティングを学び、2016年に修士号を取得。現在は、子ども向け読み物の創作に意欲的に取り組んでいる。初めてのYA小説 Just End It を2020年8月に発表。家族は夫と双子の娘。