
- 【基本情報】
- 【概要】
- 【各編の内容】※1〜5は結末にふれています。6〜10はタイトルとページ数のみ記載します。
- A Game of Cards トランプで勝負(9ページ)
- Beginning of the Tournament ホッケー大会の始まりに(11ページ)
- The Makutu on Mrs Jones ジョーンズ夫人、呪われる(23ページ)
- Fire on Greenstone 火を浴びたグリーンストーン(9ページ)
- The Other Side of the Fence フェンスの反対側(29ページ)
- In Search of the Emerald City エメラルドの都をさがして(7ページ)
- One Summer Morning ある夏の朝(50ページ)
- The Child 子ども(10ページ)
- The Whale クジラ(11ページ)
- Tangi 弔い(11ページ)
【基本情報】
書名:Pounamu Pounamu(仮題『ポウナム ポウナム』)
著者:ウィティ・イヒマエラ(Witi Ihimaera)
版元:Reeds
ISBN:9780143010913
ページ数:180
読者対象:大人
出版年:2003年(改訂版)
*初版は1972年。現在は50周年記念版(版元はペンギンランダムハウスNZ)が流通しています。
**最後に収録されているTangiは邦訳がありますが、内容は改訂されています(邦題「通夜」百々佑利子訳 評論社『現代ニュージーランド短編小説集』に収録)。
【概要】
ニュージーランド先住民マーオリの小説家ウィティ・イヒマエラの単行本デビュー作。押しも押されぬ大作家の地位を確立した後も、読者の間で人気が高いのが本書だという。V・S・ナイポールの『ミゲル・ストリート』を思わせる、ユーモラスで温かくて切ない物語10編。
【各編の内容】※1〜5は結末にふれています。6〜10はタイトルとページ数のみ記載します。
A Game of Cards トランプで勝負(9ページ)
少年タファイの祖母ミロは、トランプが大好き。毎週土曜日に、おばちゃん仲間たちとタバコを吸いながら勝負するのが楽しみだった。東西の横綱的な強さだったのが、ミロばあちゃんとヘタ夫人。2人は親友であり宿敵だった。ヘタ夫人はズルの達人。なんとも器用に片目を動かして、隣の人の持ち札を盗み見る。
大学生になって故郷を離れたタファイは、ミロばあちゃんの体調が悪いと知り、帰省した。見舞いに行って話しているうちに、ミロばあちゃんらしさが戻ってきた。ところが夜遅くに容態が急変。親族が大勢集まる。そこへ宿敵ヘタ夫人もやってきて、ベッドの上でミロばあちゃんとトランプを始めた。いつものようにタバコをプカプカ吸いながら、「ズルしただろう」「あんたこそ」とやりあう。そんなやりとりをして笑いながら、ミロばあちゃんは息を引き取った。その年、ヘタ夫人も亡くなり、ミロばあちゃんの隣に葬られた。2人でトランプの勝負を続けられるように。
Beginning of the Tournament ホッケー大会の始まりに(11ページ)
大学生のタファイは、故郷でイースター休暇に開催されるホッケー大会のために帰省する。人数が足りないので、白人の友だちジェリーを連れていった。とびきりきれいな妹がいると聞いてついてきたジェリーだが、実は妹は7歳。おまけにこのホッケー大会はなんともお粗末で、会場は牛の放牧場だし、選手たちはゴム長で現れるし、道具は全然足りないし、なぜか入場行進から審査が始まる。何も聞いていなかったジェリーは、マーオリのコミュニティで浮きまくり。
試合は女子の部から始まる。一回戦のレベルはひどいもので、反則プレイの連続。目の悪いレフリーは依怙贔屓判定の連続。ジェリーはといえば、タファイの従姉妹モアナの美しさにうっとり。
女子の試合を見ながら、タファイと父は微笑み合う。地域の人びとの親睦のためにミロばあちゃんが始めたホッケー大会を、今年も開催できてよかったな。
The Makutu on Mrs Jones ジョーンズ夫人、呪われる(23ページ)
タファイは11歳の夏休みに、配達助手のアルバイトをした。その頃、村の郵便物や荷物の配達を一手に引き受けていたのは、急死した夫を引き継いだジョーンズ夫人だ。アイリッシュ系の彼女は、赤毛で長身でたくましく、感情の起伏が激しい女性。そして、とびきりの美人である。
この地域の家々の多くは、道路沿いの門から玄関まで遠いのだが、配達は門の前までと決まっていた。ところが、村の有力者であるトフンガ(マーオリの伝統的な知恵者、呪術者、あるいは司祭のような存在)のホヘパ氏は、3つある門(家畜の出入りを防ぐゲート)を通って玄関前まで配達させていた。傲慢無礼なこの男にジョーンズ夫人は我慢がならず、大喧嘩の末、玄関へ行くのをやめて、原則通り、道路沿いの門で荷物を下ろすようになった。
クリスマスイブにジョーンズ夫人がパブで飲んでいると、ホヘパ氏が現れた。ジョーンズ夫人が声をかける。「クリスマス休戦にして、一緒に飲みましょ」 ホヘパ氏は無言で笑みを浮かべ、去っていった。
休暇明けに、ホへパ氏宛の書留郵便があったため、ジョーンズ夫人はしぶしぶ玄関まで配達した。するとホへパ氏が、一緒に飲もうとジョーンズ夫人を中に誘った。タファイは外で待っていたが、後悔することになる。自分が一緒にいれば、ジョーンズ夫人を助けてあげられたかもしれない、と。しばらくして出てきたジョーンズ夫人は、そのときから変わってしまった。トフンガであるホへパ氏に呪いをかけられたに違いない。なぜなら、ジョーンズ夫人がそのときにハンカチをなくしたからだ。
マーオリにはこんな言い伝えがある。髪の毛や爪のかけらやハンカチを通して、呪いをかけられることがある。だから切った髪や爪は、すぐに処分すべき。ハンカチは決してなくさないように。
ハンカチを取り戻せば呪いはとける。タファイは無謀にも、夜遅くにホへパ氏の家に忍び込み、ハンカチをさがした。すると家の中にジョーンズ夫人の姿が!
夏休みが明けて、タファイはアルバイトを辞めた。その後ジョーンズ夫人と顔を合わせることはほとんどなかったが、噂はよく耳にした。ホヘパ氏に支配されたジョーンズ夫人は、ホヘパ宅の玄関まで荷物を届け続けた。ジョーンズ夫人に恋していたタファイは、最後まで考えられなかった。あの2人が結婚するなんて……
Fire on Greenstone 火を浴びたグリーンストーン(9ページ)
帰省したタファイは、祖父に会いにいった。祖父は、1年前に亡くなった妻ミロを思い続けていた。地域の人びとの結びつきを大切にし、土地を守り、過去に奪われた土地を取り戻すための仕事をしていたミロ。誰がこの仕事を引き継いでくれるのだろう、と。
祖父母の家はまるで博物館だ。先祖たちが守ってきた伝統の品々、スポーツ大会のトロフィーの数々、写真、そして大切な書類が保管されている。
立派な箱にしまわれた大きなグリーンストーン(翡翠)を祖父が見せてくれた。マーオリ語ではポウナムという。タファイは幼い頃、このポウナムをほしがったが祖母に断られた経験がある。この日祖父は、空間に向かって話しかけた。「ミロや、これをタファイにやってもいいかい?」しばしの静寂の後、祖父はタファイに告げた。「準備ができたらここに戻ってこい。そしてとどまれ。そのときにこのグリーンストーンはお前のものになる」
ウェリントンに戻ったタファイのもとに、悪いニュースが届いた。祖父母の家が火事で全焼したという。祖父は無事だったが、大切なものは何もかも燃えてしまった。悲しみに暮れるタファイだが、やがて思い出す。グリーンストーンのこと、そしてミロばあちゃんの仕事の継承のことを。火に耐えるものだってあるじゃないか。あの火事以来タファイを苛んでいた炎のイメージが、そのときからグリーンストーンの輝きのイメージに変わった。
The Other Side of the Fence フェンスの反対側(29ページ)
英国から3年前に引っ越してきたシモンズ一家は、夫妻と子ども2人という家族構成。フェンスを隔てた隣の家で暮らすのは、マーオリ人のヘレマイア一家で、かかあ天下の夫妻に子どもが6人いる。
ヘレマイアの子どもたちは、口が達者で盗み癖があり(本人たちは「借りた」という)、遠慮を知らず、しょっちゅうフェンスを越えてシモンズの家にやってくる。でも決して悪い子たちではないし、シモンズ一家を好いてくれている。シモンズ夫妻もマーオリをあからさまに蔑んだりしない。いざこざは多々あったが、概して友好的にやってきた。
が、立ち入り禁止と言い渡してあったニワトリ小屋でヒナが死んでいるのを見つけたシモンズ氏は、ヘレマイアの次男を責める。それを知った母親のミリー・ヘレマイアは激怒。シモンズ氏に向かって、これまでの恨み辛みを吐き出す。あんたたちはヘレマイア家の悪口を言いふらしているとか、悪いことをするのはいつもヘレマイアの子たちだと決めつけているとか。もといた場所に帰れとも言い放った。
その夜シモンズ氏は謝罪に行くが、この時もミリーにあれこれ言われ、弁解の隙を与えてもらえなかった。また、ミリーの背後に立ってシモンズ氏を見つめる次男の目には、敵意が感じられた。自宅に帰ったシモンズ氏を、妻は「時が解決する」といって慰めるが、本当にそうだろうか? 窓からヘレマイアの家を見ると、ミリーもこちらを見ていた。その後、電気が消えた。
In Search of the Emerald City エメラルドの都をさがして(7ページ)
One Summer Morning ある夏の朝(50ページ)
The Child 子ども(10ページ)
The Whale クジラ(11ページ)
Tangi 弔い(11ページ)
※同じ名前の人物が複数の物語に登場しますが、設定は必ずしも同じではありません。