ニュージーランドの本

児童文学を中心に、ニュージーランドの本(ときどきオーストラリアも)をご紹介します。

★『オールド・ブルー 世界に1羽の母鳥』

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【基本情報】
『オールド・ブルー 世界に1羽の母鳥』
       (OLD BLUE : The Rarest Bird in the World 1993)
メアリ・テイラー文・絵 百々佑利子訳 さ・え・ら書房 1999年
ISBN:9784378001074  ページ数:32  読者対象:小学生以上
*1994年AIM児童図書賞ノンフィクション部門受賞作品

【概要】
 ニュージーランド固有種の小鳥ブラックロビンは、個体数5羽という絶滅の危機を乗り越えた。その立役者となった雌鳥〈オールド・ブルー〉と、研究チームによる保護活動を描いたノンフィクション絵本。

 【内容紹介】
 ニュージーランドでは野鳥の保護活動が盛んです。国鳥の飛ばない鳥キーウィのことは、ご存知の方も多いのではないでしょうか? 絶滅が危惧されて、手厚く保護されています。日本ではあまり知られていませんが、飛べる小鳥たちにも絶滅危惧種は多く、その保護活動を国民が見守っています。
 本書で紹介されているのは、ニュージーランド南島から800キロほど東にあるチャタム諸島固有の黒いロビン(学名:Petroica traversi/英名:Chatham Island black robin/和名:チャタムヒタキ)と、その保護活動の様子です。
 ほかの鳥たち同様、このロビンも、ヨーロッパ人の到来で外来種が持ち込まれた頃から、急激に数を減らしていきました。1970年代に、研究チームによる調査が始まりましたが、確認できたのは20羽ほど。そしてその後、5羽にまで減ってしまいます。雌は2羽で、そのうち1羽は子育てがうまくいきません。
 このロビンたちを絶滅から救うため、研究チームは絶海の孤島で保護活動を展開します。あっと驚くようなやり方で……!
 写実的に描かれた真っ黒な小鳥のつぶらな目がなんとも愛らしく、構図は芸術的で、どのページを見ても絵画のようです。作者メアリ・テイラーは、おもに絵画や版画を手掛けるアーチストですが、子ども向けの語り手としてもたいへんすぐれていると感じます。奇跡ともいえる結果を出した保護活動を伝える、質の高い絵本です。

オールド・ブルー 子どもの本のさ・え・ら書房

【作者紹介】
メアリ・テイラー(Mary Taylor)
 1948年オークランド郊外のデヴォンポート生まれ。オークランド大学教員養成カレッジとマッセイ大学で学び、教員を経て、1983年からアーチストとして活躍。ニュージーランドの自然や動植物を描いた作品が高く評価されている。執筆も手掛けた絵本作品は、本書のほかに、Dyptoe The Yellow-Eyed Penguin がある。

【参考ウェブサイト】
メアリ・テイラー紹介ページ(「パーネルギャラリー」ウェブサイト内)
https://www.parnellgallery.co.nz/artists/mary-taylor/

保護活動のリーダーだったドン・マートン氏のインタビュー動画
       (ニュージーランド環境省You Tube チャンネル内)
https://www.youtube.com/watch?v=s4EbXxsUIJU