【基本情報】
書名:Taking the Lead : How Jacinda Ardern Wowed the World
(仮題『ヤングリーダー 世界をワオ!といわせる女性首相ジャシンダ・アーダーン』)
作者:David Hill(デイヴィッド・ヒル)文/Phoebe Morris(フィービ・モリス)絵
出版社:Penguin Random House New Zealand 出版年月:2020年3月
ISBN: 9780143774518 ページ数:33
読者対象:小学生以上
*試訳(全訳)あります
【概要】
ニュージーランドの現首相ジャシンダ・アーダーンの伝記絵本。37歳で首相になり、翌年出産し、育児をしながら国民に信頼される政治を続ける若き女性リーダーの生い立ちと活躍ぶりを伝える。
【あらすじ】
警察官の父、学校の食堂を運営する母のもとに生まれ、田舎町の公立学校で教育を受けたジャシンダは、靴を履いていない子や弁当を持参できない子が同級生にいることを知ったときから、人のために何かをしたいと強く思うようになった。十代で政治に目ざめて労働党の活動に加わり、海外暮らしを経験した後に28歳で国会議員となる。2017年、37歳で首相に就任。翌年に女の子を出産して6週間の産休をとったのちに、職務に復帰する。本書では、2019年3月にクライストチャーチで起きたモスク銃撃事件の対応までのことが紹介されている。
巻末の年表には、ジャシンダ・アーダーンの人生のほか、世界各国の女性参政権獲得や女性の指導者誕生についても記されている。
【解説・評価】
世界で最初に女性参政権を獲得した国であり、女性の活躍がまぶしい国ニュージーランドで、ジャシンダ・アーダーンは、まさに現在進行形で活躍中の女性だ。2017年以来、ニュージーランド史上最年少での首相就任、出産、パートナーによるサポートなどで話題になり、2019年のモスク銃撃事件への対応でも国際的に注目された。そして今年、コロナウィルス流行の対策として徹底的なロックダウンを決断し、強い指導力を発揮。ロックダウンは功を奏して、警戒レベルの2段階引き下げが実現し、ビジネスも少しずつ再開されてきたところだ(5月17日現在の状況)。緊急事態宣言の記者会見を締めくくるメッセージは"Be kind."だった。その後も国民への語りかけを続ける真摯な姿勢と強い指導力に、国民は厚い信頼を寄せているという。
デイヴィッド・ヒルの淡々とした文章は、現役で活躍する人物を語るにふさわしい。ジャシンダ・アーダーンを知る入口となる良書。国民に信頼される現役指導者の経歴から、学べることはたくさんあるはずだ。
【作者紹介】
デイヴィッド・ヒル(文)
1942年、ニュージーランド北島ネイピア生まれ。ウェリントンのヴィクトリア大学卒業後、教員として中等学校に14年間勤務。その後フリーになり、作家、ジャーナリスト、書評家として活躍。邦訳されたYA作品 See Ya, Simon(邦題『僕らの事情。』田中亜希子訳/求龍堂)ほか、多くの作品がニュージーランドの児童図書賞で候補作品や受賞作品に選ばれている。ラジオ番組の本の紹介コーナーにもレギュラー出演。北島西海岸のニュープリマス在住。
フィービ・モリス(絵)
ウェリントン在住のイラストレーター。デイヴィッド・ヒルとのコンビによる伝記絵本シリーズ1作目 First to the Top: Sir Edmund Hillary's Amazing Everest Adventure(仮題『頂上にいちばんのり 世界ではじめてエベレストに登ったエドマンド・ヒラリーのぼうけん』)が出版デビュー作。ほかに、子ども向け読み物 Frankie Potts シリーズ(ジュリエット・ジャッカ作)、ノンフィクション読み物 Go Girl: A Storybook of Epic NZ Women(仮題『すすめ、ガールズ! ニュージーランドの偉大な女の子たちの物語』バーバラ・エルス文)の挿絵を手がけている。
★ヒルとモリスのコンビによるニュージーランドの伝記絵本シリーズは、本書が6作目。1作目の情報はこちらをご覧ください。