ニュージーランドの本

児童文学を中心に、ニュージーランドの本(ときどきオーストラリアも)をご紹介します。

★Kate Sheppard:Leading the Way for Women (仮題『ケイト・シェパード 世界の女子リーダー』)

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【基本情報】
書名:Kate Sheppard:Leading the Way for Women
  (仮題『ケイト・シェパード 世界の女子リーダー』)

作者:マリア・ギル(Maril Gill)文
   マーコ・イヴァノセッチ(Marco Ivančić)絵
出版元:Scholastic New Zealand
発行年月:2018年11月
ページ数:40(本文34)
サイズ:25.5×24.5cm(ハードカバー)
ISBN:9781775435471
対象年齢:小学生以上
作品トレーラー https://www.youtube.com/watch?time_continue=91&v=MU1rOOcXIqE

 *試訳(本文全訳)あります

【概要】
 1893年に世界で初めて女性の投票権が認められた国ニュージーランド。その国民的英雄のひとりで、投票権獲得に尽力した女性ケイト・シェパードの生い立ちと投票権獲得までの道のりを、子ども向けに紹介するノンフィクション絵本です。
 1850年代のイギリスで育ったケイトは、サッカーをやらせてもらえないことに不満を持つ少女でした。14歳で父親を亡くし、20歳のときに母親と兄弟とともにNZに移住。結婚して息子を育てながら、社会運動に関わります。投票権獲得運動を始めたのは、アメリカの禁酒教会の女性の講演を聴いたことをきっかけでした。署名運動を行い、2度失敗するも、1893年に3度目の正直で法案通過を果たします。国中を回っての集会やデモ行進、一軒一軒家を訪ねての署名運動が功を奏したのです。その後は、女性のための新聞を創刊したり、子どもや高齢者の生活向上のために尽力したりと、活動を続けました。NZはもちろん、世界中の女性を導いたリーダーです。

 【補足】
・巻末に、年表/世界の女性の現状/世界の女性の活躍/用語集あり。
・シェパードの活躍は『世界を変えた100人の女の子の物語』(エレナ・ファヴィッリ、フランチェスカ・カヴァッロ文/芹澤恵/高里ひろ訳/河出書房新社)にとりあげられた。
・NZの10ドル紙幣にはシェパードの肖像画が印刷されている。

【評価】
 世界初の女性投票権を実現させた実績のわりに、あまり注目されてこなかったケイト・シェパード。特に日本では、関連書籍をさがしてもほとんど見つからないほど無名です。ここ数年、世界の女性の活躍が注目され、さまざまな分野で活躍してきた女性たちを紹介する本がふえてきました。また、NZでは、2017年に30代の女性ジャシンダ・アーダーンが首相に就任し、その後出産して子育てをしながら国政を担っています。そんな流れに乗って出版された本書をさっそく取り寄せたところ、わかりやすく親しみやすい内容で、シェパードを初めて知る子どもたちに受け入れてもらえる本だと思いました。
 作者のマリア・ギルは、ノンフィクション読み物で定評があり、本書のイラストも手がけたマーコ・イヴァノセッチとのコンビで、2016年にNZ児童書及びYA小説賞の年間最優秀図書賞を受賞しました。歴史、人物、自然などさまざまなテーマを扱い、伝えるべき内容を、子どもにとって興味深いエピソードとともに生き生きと解説します。
 女性の活躍に注目するとともに、投票することの大切さを考えるきっかけにもなる良書です。邦訳出版されてほしいと強く思います。

【作者紹介】
マリア・ギル(文)
 1961年オークランド生まれ。教育学とジャーナリズムを学び、教職を経て現在は作家専業。学習教材と子ども向けノンフィクション作品に定評がある。NZの児童図書賞では、2度の世界大戦で活躍した人物を紹介する  ANZAC Heroes(マーコ・イヴァノセッチ絵)で2016年年間最優秀図書賞を受賞したほか、人物伝 New Zealand Hall of Fame: 50 Remarkable Kiwis、火山を紹介する Rangitoto などで候補作入りを果たしている。邦訳はまだない。児童書のレビュアーとしても活躍。

マーコ・イヴァノセッチ(絵)
 マッセイ大学でデザインとイラストレーションを学ぶ。現在はウェリントンを拠点に、書籍やウェブサイトのイラストレーターとして活躍。マリア・ギルとのコンビで出した子ども向けノンフィクションは、本書が5作目。1〜3作目はいずれもニュージーランドの児童図書賞で受賞作や候補作に選ばれている。