ニュージーランドの本

児童文学を中心に、ニュージーランドの本(ときどきオーストラリアも)をご紹介します。

★Puffin the Architect(仮題『パフィンのママが つくったおうち』)

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【基本情報】
書名:Puffin the Architect(仮題『パフィンのママが つくったおうち』)
   *2018年NZ Booklovers 賞児童書部門受賞作品
   *2019年ニュージーランド児童書及びヤングアダルト小説賞
              〈絵本賞〉候補作品
              〈ラッセル・クラーク挿絵賞〉受賞作品
作者:キンバリー・アンドリューズ(Kimberly Andrews)文・絵
出版元:ペンギンランダムハウス・オーストラリア、ニュージーランド
発行年月:2018年7月
ページ数:32
サイズ:26 × 31cm(ハードカバー)
ISBN:9780143793755
対象年齢:5歳ぐらいから
*試訳(全訳)あります

【概要】
 パフィン(ツノメドリ)のママは、優秀な設計士です。今は自分のおうちを設計中。でも、子どもたちがなかなか気に入ってくれません。いったい、どんなおうちができるのかな?

 【ストーリー】※結末にふれています
 優秀な設計士であるパフィンのママが、2羽の子どもと暮らす新居を考案中。これまでに設計した建物を、子どもたちに見せてまわります。カモノハシのパン屋さん、イヌの探偵事務所、ガチョウの絵描きさんのアトリエ、ほかにも、たくさん。充実の収納スペース、折り畳み式の家具、便利な仕掛けなど工夫がいっぱいの、機能的ですてきな家ばかりです。
 でも、パフィンの子どもたちは、どれも気に入らない様子。お手上げとなったママに、子どもたちはいいます。「ぼくたちがほしいのは、パフィンのおうちだよ」
自分たちの暮らしにふさわしい、海辺のわが家を作りましょう。ママは、これまでの経験を生かして、機能的で居心地のよい、パフィンのおうちを設計します。最後は、親子3羽で入居し、友達をたくさん招いてごちそうを囲む場面が描かれています。

【評価】
 パフィンという鳥の愛らしさと、家の内部やまわりの風景を描いたイラストにときめきを感じて購入しました。理想の家を求める主人公たちが、いろいろな例を見た末に結論にたどり着くという絵本の王道的なストーリーを、場面ごとのイラストをじっくり味わいながら読める良書です。7種類の生き物とその職業、仕事場の様子やまわりの風景、それぞれが独特で、違った世界を味わわせてくれます。さまざまな設計図が散らしてあるページもあり、読むたびに何かしら発見があるところも魅力です。最後は、家族や友人と過ごす幸せが表されています。
 鉛筆とフォトショップを使ったイラストは、細部まで丁寧に描かれ、かわいらしくて美しいです。強いて難をつけるなら、整然としすぎていることでしょうか。もっと勢いのある画風が好きな人も多いでしょう。通りすぎてしまう読者と、細部までいつまでも見続ける読者に分かれるかもしれません。

 

【作者紹介】
キンバリー・アンドリューズ
・イラストレーター、絵本作家、生物学と地質学の研究者。さらに、生き物を描いた衣料品の製作、販売を手掛ける会社Tumbleweed Tee を経営している。
・本書が絵本作家としてのデビュー作。イラストのみを手掛けた本に、マオリを題材にした絵本Tuna and Hiriwa(Ripeka Takotowai Goddard文)、2018年NZ児童図書賞ノンフィクション部門候補作のExplore! Aotearoa(Bronwen Wall文)がある。
・カナダ出身。ボルネオと英国滞在を経て、現在はニュージーランドのウェリントン在住。小さいけれど機能的なコンテナハウスで暮らしている。