ニュージーランドの本

児童文学を中心に、ニュージーランドの本(ときどきオーストラリアも)をご紹介します。

★The Christmas Tree Tangle(仮題『子ネコがツリーのてっぺんに』)

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 【基本情報】
書名:The Christmas Tree Tangle(仮題『子ネコがツリーのてっぺんに』)

文:マーガレット・マーヒー(Margaret Mahy)
絵:サラ・デイヴィス(Sarah Davis)
出版社:Penguin Random House (Puffin) New Zealand
出版年月:2017年11月 (※初版は1994年 Hamish Hamilton 刊。Anthony Kerins 絵)
ISBN: 9780143770800
サイズ:28.5×24センチ(ペーパーバック)
ページ数:32
読者対象:3歳ぐらいから

【概要】
 街角の大きなクリスマスツリーにのぼった子ネコが、おりられなくなっちゃった。たすけてやろうとのぼっていった大きなネコは、しっぽがひっかかって立ち往生。つづいて犬が、ヤギが、そして3びきのブタがのぼっていくけれど、みんなひっかかっちゃった……! 

 【感想・評価】
 ニュージーランド屈指の児童文学作家マーガレット・マーヒーの絵本の復刊。初版は英国の画家による挿絵で英国の出版社から刊行されたが、今回は地元ニュージーランド出身のサラ・デイヴィスが新たに描き起こした挿絵で、ペンギンランダムハウス・ニュージーランドからリリースされた。
 文はマーヒーが脚韻をきかせて作った愉快な物語詩。クリスマスツリーのてっぺんにのぼってしまった子ネコの顛末が語られるが、たすけにいくのがネコ、犬、ヤギ、ブタと、どんどんありえないものになっていく。結局子ネコは、ひっかかったほかの動物たちをたどって自分でおりていき、小さな女の子がほかの動物たちをたすけて一件落着。でも、そのあと、女の子の家でパーティーしちゃったから、さあ、たいへん!
 ストーリー自体は他愛ないが、魅力はやはりマーヒーのパワフルな語り口だ。脚韻を日本語で再現するのは難しいが、とびきり愉快な雰囲気は訳出できるだろう。
 デイヴィスの挿絵はきれいにまとまっていて好感が持てるが、もっとはじけてもいいように思う。

【作者紹介】
マーガレット・マーヒー(1936-2012)/文
 2人の娘を育てながら図書館司書として働くかたわらに創作を続け、1969年に絵本 A Lion in the Meadow(『はらっぱにライオンがいるよ』ジェニー・ウィリアムズ絵/はましまよしこ訳/偕成社)で作家デビュー。数々の絵本、読み物を発表し、カーネギー賞を2度受賞、2006年には国際アンデルセン賞作家賞を受賞するなど、国際的に高く評価された。2012年7月、クライストチャーチのホスピスで息を引き取る。
 ★マーガレット・マーヒー追悼記事
 http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2012/09.htm#tuitou
    (やまねこ翻訳クラブのメールマガジン「月刊児童文学翻訳」2012年9月号)

サラ・デイヴィス (1971-)/絵
 英国に生まれ。米国、スウェーデン、ニュージーランドで子ども時代を過ごす。ニュージーランドの高校で教員として勤務した後、2004年にオーストラリアに移住。イラストレーターとしてさまざまな分野で絵やデザインの仕事を経験。現在は児童書のイラストを中心に活躍している。