ニュージーランドの本

児童文学を中心に、ニュージーランドの本(ときどきオーストラリアも)をご紹介します。

★Violet Mackerel シリーズ第7巻 Violet Mackerel's Helpful Suggestion(仮題『バイオレット・マケレルのすぐれたアイディア』)

f:id:nzbook:20160510090118j:plain

【基本情報】
書名:Violet Mackerel's Helpful Suggestion(Violet Mackerel シリーズ第7巻)
   仮題『バイオレット・マケレルのすぐれたアイディア』
作者:アナ・ブランフォード (Anna Branford) 文/サラ・デイヴィス (Sarah Davis) 絵

Walker Books Australia 2014年6月 ハードカバー ISBN: 978-1922244369
ページ数:112(本文104/挿し絵多数) サイズ:18.5×13.5×1.4 cm 
読者対象:小学校低学年から

【概要】
 親友のローズが、お父さんの出張に同行して6週間も日本にいってしまうことに。自分は忘れられてしまうのではないかと心配するバイオレットは、★ちっちゃなものを送りあう法則★を思いつきました。

【あらすじ】
 親友のローズが、すごいニュースを伝えてきました。お父さんが日本に出張することになり、ローズとお母さんも同行するのだそうです。6週間も! バイオレットは、ローズと一緒に大はしゃぎ。でも、6週間もローズに会えないのかと思うと、寂しさを感じます。
 バイオレットの家でも、すごいニュースがありました。ずっと仕事をさがしていたビンセントが、豆の量り売りのお店に仮採用されたのです。しばらく働いてみてうまくいけば、正式に採用になります。家族はお祝いムードですが、ビンセントは憂うつそう。豆やナッツの種類が多いので、名前と値段をおぼえるのがとってもたいへんなのです。
 バイオレットとローズは、フラッシュカードを使って、日本語の単語をたくさんおぼえました。はしゃいでいたふたりですが、「トモダチ」という言葉をおぼえたところで、静かになってしまいました。バイオレットは、6週間も離れていたら、ローズは自分のことを忘れてしまうんじゃないかと不安を打ち明けます。ローズは、ぜったいにそんなことはないといってくれますが、ふたりとも、やっぱりちょっと心配でした。
 一方ビンセントは、家に閉じこもって豆のファイルとにらめっこ。1ページに12種類もの豆が載っていて、ほんとうにたくさんあります。それを見たバイオレットは、急にひらめき、厚紙、はさみ、マーカーなどをひっぱりだして作業を始めました。できあがったのは豆のフラッシュカード。おもてには豆の絵と名前、裏には値段を書きました。効果抜群のグッドアイディアです! ビンセントは次々とおぼえ、久しぶりに笑顔を見せました。豆のほか、ナッツ、穀物、ドライフルーツなど、山ほど種類があるので、家族みんなでさらにカードを作りました。
 ものをおぼえることのたいへんさを知ったバイオレットは、やっぱりローズは自分のことを忘れてしまうんじゃないかとますます不安になります。姉のニコラは、親友がアメリカに留学したとき、エアメールを交換したと教えてくれました。バイオレットは、エアメールに、ちっちゃなプレゼントを同封することを思いつきました。
 ローズの出発前日、バイオレットは新しい法則を提案しました。★ちっちゃなものを送りあう法則★です。離ればなれになっても、小さなものを送りあえば、心の距離を縮められるということです。ローズは大賛成してくれました。一緒に遊んだあと、夕方になったのでお別れです。ふたりは、目に涙を浮かべてハグしあいました。
 その夜バイオレットは、小さなフラッシュカードを作り始めました。まずは、「バイオレットのはじめてのペット」と書き、裏面にテントウムシの絵を描きました。こんなふうに、好きなもののカードを作って送れば、ローズは自分を忘れずにいてくれると考えたのです。その思いつきにはワクワクしたけれど、やっぱり寂しくて、涙が出そうになりました。
 それから3週間、バイオレットは、自分の好きなもののカードを作り続けました。羽のついたドレス、オークの木の葉っぱ、お気に入りの豆であるボーロッティ豆など、全部で12枚。そろそろ送ったほうがいいとママにいわれ、郵便局から投函しました。帰りに豆のお店の前を通ると、ビンセントは悪戦苦闘しているようでした。それを見たママは、寄らずにこのまま帰りましょうといいました。
 ローズからの手紙はまだ来ません。毎日郵便受けをのぞきますが、請求書やチラシばかり。そして5週が経ったある日、ついにローズからエアメールが届きました。小さなものが入っています。テントウムシのストラップです。手紙にはこう書いてありました。「テントウムシのストラップを送るね。バイオレットのペットだったテントウムシ、スモール・グロリアほどきれいじゃないけど」
 バイオレットは喜びに満たされました。ローズは自分のことを忘れるどころか、テントウムシの名前までおぼえていてくれたのです。日本にいるローズとの距離が、ほんとうに縮まったように思えました。
 6週目は、まるでクリスマスを待つような長い長い1週間でした。〈以下略〉


【感想・評価】※結末にふれています。
 第7巻は、日本の読者にうれしいものになった。ローズの日本訪問というニュースで始まるこの話には、折り鶴、富士山、お寿司なども登場。バイオレットとローズが日本のことで盛り上がったり、日本語をおぼえたりする様子がかわいらしく、親しみを感じる。日本の子どもたちは、外国の子ども目線の日本を垣間みて、新鮮に感じることだろう。
 バイオレットがローズとの友情に不安を感じ、それがまったくの杞憂だったことがわかるというのは第5巻と共通しているが、離ればなれになるという設定や、ビンセントの就職問題と絡めることで上手にストーリーを運んでおり、5巻とは違う要素を味わいながら読める。豆の種類がたくさん出てくる点は楽しくて、笑いを誘う。ささやかなできごとを語る中で、バイオレットの純粋さ、友だちや家族の温かさ、手作りのよさなどを伝えるという姿勢がまったくぶれていないことも大いに評価できる。過去のできごとを拾い、ビンセントの就職という家族のニュースも取りこんで、シリーズとしての充実が計られており、今後も期待できそうだ。


第1巻の情報(作者紹介含む)はこちら
第2巻の情報はこちら
第3巻の情報はこちら
第4巻の情報はこちら
第5巻の情報はこちら
第6巻の情報はこちら