ニュージーランドの本

児童文学を中心に、ニュージーランドの本(ときどきオーストラリアも)をご紹介します。

★Violet Mackerel シリーズ第5巻 Violet Mackerel's Possible Friend(仮題『バイオレット・マケレルの友だち候補』)

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【基本情報】
書名:Violet Mackerel's Possible Friend(Violet Mackerel シリーズ第5巻)
   仮題『バイオレット・マケレルの友だち候補』
作者:アナ・ブランフォード (Anna Branford) 文/サラ・デイヴィス (Sarah Davis) 絵

Walker Books Australia 2013年2月 ハードカバー ISBN: 978-1921977565
ページ数:112(本文103/挿し絵多数) サイズ:18.5×13.5×1.4 cm 
読者対象:小学校低学年から

【概要】
 新居に越したマケレル一家。バイオレットは、隣の家に住む女の子ローズと仲良しになります。ローズの部屋で、天蓋つきベッドやドールハウスに胸を躍らせますが、一方で不安も感じていました。自分はみすぼらしい女の子だと思われているかもしれない。ローズはほんとうの友だちになってくれるかな?

 
【あらすじ】
 新しい家に引っ越したマケレル一家。バイオレットが庭の板塀をさわっていたところ、木の節の部分が向こう側に落ち、塀に小さな穴があいてしまいました。隣の家には同い年の女の子が住んでいるそうなので、バイオレットはその子宛におわびの手紙を書き、「ちっちゃなものコレクション」から選んだ銀のベルと一緒に、その穴に置きました。バイオレットは、その女の子と友だちになりたいなと思っていたので、こんな法則も考えていました。「ちっちゃくてすてきなものを交換した者同士は、いい友だちになれる」
 驚いたことに、その日のうちに返事が届きました。隣の家の女の子ローズが、アメジストの石と手紙を、塀の穴に入れてくれたのです。翌日バイオレットは、ローズの家に遊びにいきました。ローズは、ピンク色のすてきなドレスを着ています。部屋もピンクが基調で、ちりひとつなく片付いています。バイオレットは、天蓋つきベッドやすてきなドールハウスはもちろんのこと、ジュースのグラスや、氷をつかむトングにも魅了されます。一方で、自分がおさがりの服を着ていることや、ごたごたした家に住んでいることが恥ずかしく思えてきました。実際、大きすぎるスカートのウエストを寄せて、洗濯ばさみで留めているのを、ローズに見られてしまいました。
 さて、バイオレットがローズを招待すると、ローズは喜んでやってきました。そして、ビンセントが朝食にヨーグルトを作る様子や、ママの手編みの物など、ごくふつうのものを見ては、歓声を上げました。なにもかもがみすぼらしいのではないかと心配していたバイオレットは、うれしくなりました。
 翌週末は、ローズの誕生日パーティー。花のコスプレをして楽しむのだそうです。バイオレットも招待されますが、うれしい反面、再び不安にかられます。ほかの友だちはみんな、お店で買ったすてきな衣装を着てくるのではないか。それに、豪華なプレゼントを持ってくるのではないか……。バイオレットは、衣装もプレゼントも手作りです。お姉ちゃんのニコラに協力してもらって、すてきなものが完成しましたが、ほかのみんなと比べたときに、みすぼらしく見えるように思えてなりません。ローズは、バイオレットのちっぽけなプレゼントに、がっかりするかもしれません。〈以下略〉

【感想・評価】※結末にふれています
 豊かな想像力が持ち味の無邪気な女の子バイオレットだが、今回はよくないことばかり想像して、憂うつになってしまう場面が多い。お金持ちの隣人の家を訪れ、今まで知らなかった世界を知ってわくわくするが、劣等感も芽生える。自分を尊重してくれるやさしい家族に守られてきたバイオレットの、内弁慶な面が描き出されたエピソードだ。
 パーティーを控えたバイオレットは、切実に願う。既製品のドレスではない衣装を着てくる子がいますように。自分と同じようにほんのちっぽけなプレゼントを持ってくる子が、1人でいいからいますように、と。私も子ども時代に、同じような思いをしょっちゅう抱いていた。このようなちょっとした劣等感は、多かれ少なかれ、誰もが持つものだろう。
 パーティーでは案の定浮いてしまい、ローズとの距離を感じて悲しくなるバイオレットだが、ローズ本人に声をかけてもらって救われる。特別なことが起こるわけではなく、バイオレットがすてきだと思うものをローズもすてきだ思ってくれていたとわかることで、バイオレットは元気を取り戻すのだ。そして、ローズと友だちになれたことを心から幸せに思う。バイオレットはこれからも、自信を持って自分の世界を広げてゆくだろう。家族が支えになっていることはいうまでもない。今回、家族の登場場面は少ないが、衣装やプレゼント作りに協力したり、憂うつになったバイオレットをみんなで励ましたりしている。
 楽しかったひとときをふりかえったり、今度はこんなことをしてみたいと思いを巡らせたりするとき、バイオレットはむやみに口に出さず、ひとり心の中でかみしめる。会話より、三人称の語りと挿絵に描かれた表情でバイオレットの気持ちを伝えているところに、このシリーズ独特のゆったりとした味わいを感じる。
 文章では全くふれられていないが、挿絵を見ると、ローズは黒人である。子ども同士が友だちになるならないに、人種の違いは関係ないのだ。そんな理想的な友情のあり方をごくごく自然に描けるのは、バイオレットという無垢な女の子を主人公にしたこのシリーズが、作品として成熟しているからではないだろうか。

 

【他国版情報】
英国版:Sam Wilson 絵/Walker Books Ltd./978-1406349849
米国版:Elanna Allen 絵/Atheneum Books for Young Readers/978-1442494565


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