ニュージーランドの本

児童文学を中心に、ニュージーランドの本(ときどきオーストラリアも)をご紹介します。

★Violet Mackerel シリーズ第3巻 Violet Mackerel's Natural Habitat(仮題『バイオレット・マケレルと本来の生息地』)

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【基本情報】
書名:Violet Mackerel's Natural HabitatViolet Mackerel シリーズ第3巻)
   仮題『バイオレット・マケレルと本来の生息地』
作者:アナ・ブランフォード (Anna Branford) 文/サラ・デイヴィス (Sarah Davis) 絵

Walker Books Australia 2011年11月 ハードカバー ISBN: 978-1921529191
ページ数:112(本文103/挿し絵多数) サイズ:18.5×13.5×1.4 cm 
読者対象:小学校低学年から

【概要】
 庭でつかまえたテントウムシが死んでしまって、悲しむバイオレット。そのとき、お姉ちゃんのニコラは、理科の自由研究ができなくて途方に暮れていました。ふたりは、テントウムシの一生をビーズで製作し、大切なことを学びます。

 
【あらすじ】
 ショッピングセンターのフードコートで、ママは、ご近所のリンさんと、おしゃべりに花を咲かせています。退屈したバイオレットのもとに、スズメがやってきました。食べ物がなかったので、巣の材料になりそうな糸くずをやりました。スズメはそれをくわえて飛んでいきました。バイオレットは、新しい説を思いつきました。「ちっちゃなものに親切にすると、恩返ししてもらえることがある」。名づけて、★ちっちゃなものを助ける法則★です。しばらくすると、さっきのスズメがリンさんの近くにやってきました。スズメぎらいのリンさんが腰を上げたおかげで、やっとお開きになりました。帰りの車の中でバイオレットは、スズメについて質問しました。ママは、ショッピングセンターは、スズメの本来の生息地ではないと教えてくれました。
 お姉ちゃんのニコラは、理科の自由研究のテーマが決まらず、いらいらしています。バイオレットは、庭にたくさんいるテントウムシの研究を提案しましたが、却下されました。前はやさしかったニコラですが、最近、冷たいのです。ママによると、「そういう時期」なのだそうです。バイオレットは、ニコラの自由研究とは無関係に、テントウムシをつかまえることにしました。広口瓶に、きれいな飾りひもや花や石、それに水を少し入れ、庭で見つけたテントウムシ(名づけてスモール・グロリア)を入れました。ふたをして、ベッドの脇に置いて寝ました。
 ところが、朝になると、スモール・グロリアは死んでいました。あまりのことにショックを受けたバイオレット。どうしたらいいのでしょう。ママたちは朝市に出かけてしまい、家にいるのはニコラとバイオレットだけです。バイオレットが、ためらいながらニコラの部屋に行くと、なんとニコラのほうが泣き出しました。自由研究ができなくて、途方に暮れているのです。自分はぼんくらだというニコラに、バイオレットは、「ぼんくらはわたしだよ」といって、スモール・グロリアのビンを見せました。昨夜から生き物図鑑を読んでいたニコラは、小さい物は命が短いから、テントウムシが死んだのも、バイオレットのせいじゃないかもよといってくれました。図鑑を見たバイオレットは、テントウムシの卵は、ニコラがアクセサリー作りに使うビーズにそっくりだと思いました。バイオレットの提案で、ニコラは、テントウムシの一生をビーズで作ることにしました。ほんとうの生物を使った作品のほうがいいのですが、しかたありません。バイオレットも手伝いました。何時間もかけて、ニコラは自由研究を完成させました。
 午後、バイオレットは、ニコラに立ち合ってもらい、スモール・グロリアのお葬式をしました。マッチ箱にスモール・グロリアを入れ、まずはバイオレットがスピーチをしました。そのあとニコラは、「自由研究の作品を、スモール・グロリアにささげます」と、いいました。それから2人は、「スモール・グロリアのお気に入り」(「わたしのお気に入り」の替え歌)を歌い、庭にスモール・グロリアを埋めました。
 月曜日の夜は、自由研究のお披露目です。家族みんなで学校に行き、作品を見てまわりました。〈以下略〉

【感想・評価】
 これもいい作品。スムーズで自然なストーリー運びの中に、バイオレットの無邪気さやかわいらしさ、やさしさがたっぷり盛り込まれている。思春期の姉と幼い妹の関係も、すれ違いから修復まで、あくまでもバイオレット目線で描かれており、ほほえましさを感じる。大げんかや劇的なことが起こるわけでなく、ちょっとしたことから生まれるふれあいを描いている点が、このシリーズらしい。小さな生き物の命や暮らし方を尊重するという大切なテーマを上手に取り入れている点も、高く評価できる。1、2巻同様、ハイテクな物は登場せず、手作りの魅力が伝わってくる。読んだあと、「物を買うのをやめて何かを作ってみよう」とか、「パソコンやスマートフォンから離れて過ごしてみよう」などと思わせるシリーズだ。

 

【他国版情報】

英国版:Sam Wilson 絵/Walker Books Ltd./978-1406326956
米国版:Elanna Allen 絵/Atheneum Books for Young Readers/978-1442435957

 

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