ニュージーランドの本

児童文学を中心に、ニュージーランドの本(ときどきオーストラリアも)をご紹介します。

★Happy Hens(仮題「ニワトリのハッピー一家」)シリーズ

【基本情報】
"Happy Hens"(ニワトリのハッピー一家)シリーズ全4巻
"Chicken Dinners"(仮題『ニワトリのごちそう』)ISBN:978-1869432522
"Babysitter Bother"(仮題『ヒヨコもりは たいへん』)ISBN:978-1869432539
"Egg Robbers"(仮題『たまごどろぼう』)ISBN:978-1869432546
"Croak-a-roo-roo-roo"(仮題『ゴゲゴッゴ』)ISBN:978-1869432553

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作者:イヴォンヌ・サザランド(Yvonne Sutherland)原案/絵
   ジョイ・カウリー(Joy Cowley)文
出版元:Ashton Scholastic
発行年:1995年
ページ数:各24ページ
寸法:20 x 18 cm
対象年齢:3歳ぐらいから

*試訳(全訳)あります  

 

【概要】
  もともと陶器の置き物として誕生した "Happy Hens" に、お話をつけて絵本化したもの。農場でのびのびと暮らすニワトリのハッピー一家の日常生活が、ユーモアたっぷりに描かれている。まるまるとした愛らしい ニワトリたちの、ちょっとまぬけなエピソードに、ほのぼの。

 
【登場するニワトリたち】
プルネラ……好奇心旺盛で物知りなメンドリ。冒険が好き。
ベッキー……食いしん坊でおだやかなメンドリ。数字に弱い。
ビディ………ものおじしない、気の強いメンドリ。 
シビル………子だくさんで母性が強く、しっかり者のメンドリ。
ルル…………シビルの夫で、このシリーズ唯一のオンドリ。

【あらすじ】※結末にふれています
"Chicken Dinners"(仮題『ニワトリのごちそう』)
 冒険好きなプルネラが、いやがるベッキーをむりやりつれて、農場の外の世界を見にいきました。字が読めるプルネラは、「ニワトリのごちそう」の看板を見つけて得意になります。でも、それは「鶏肉料理」の店だとベッキーに指摘されて、ふるえあがります! 家に帰ると、腹ぺこだったベッキーはすぐにえさ場に向かいましたが、プルネラは1人トリ小屋へ。一息つくと、こんなひとりごとをいいました。「すてきな冒険をしたあとは、食欲がなくなるのよね」

"Babysitter Bother"(仮題『ヒヨコもりは たいへん』)
 シビルがに合唱の練習に出かけているあいだ、ベッキーが、13羽のヒヨコたちの世話をひきうけました。でも、わんぱくなヒヨコたちは、あっちでこっちでやりたい放題。10までしか数えられないベッキーは大弱りです。最後はなぜか、43羽のヒヨコにかこまれていました!

"Egg Robbers"(仮題『たまごどろぼう』)
 ある朝、卵どろぼう(飼い主の人間)の玄関前で、カラフルな巨大卵を見つけたメンドリたち。恐れながらも温めてやると、卵はとけて、茶色い液体になってしまいました。その液体のおいしいこと! 翌朝メンドリたちは、そろって飼い主の家の玄関に向かいました。また巨大卵が産みおとされているかもしれないからです。「卵どろぼうにとられてなるものか!」と、いきごむメンドリたち。復活祭のチョコレート・エッグだとは、誰も知りませんでした。

"Croak-a-roo-roo-roo"(仮題『ゴゲゴッゴ』) 
 町じゅうの人々のめざまし時計役であるオンドリのルルが、突然声を失ってしまいます。それを直してやったのは、しっかり者の女房、シビルでした。ルルののどに引っかかっていたドングリをとってやったのです。ところがルルが深夜に鳴いてしまったので、町の人々はあわてふためきます。混乱する町を眺めながら、シビルは、「だいじょうぶ、挽回できるわよ」と、ルルを励ましました。

【感想・評価】
 こんなにかわいらしくて楽しい絵本のシリーズが、なぜ邦訳されていないのだろう? ニュージーランドでも、なぜ絶版のままなのだろう?
 この4冊を読み終えた時、そう思わずにはいられなかった。ニワトリたちの絵が、文句なしにかわいいのだ。陶器の置き物として人気の出た "Happy Hens" を絵本にするというのは、グッドアイディアだし、実際、成功していると思う。表紙の左上にあるメンドリのアイコンが愛らしく、小さめの判型も魅力的で、4冊そろえたくなるデザイン。巻数はなく、どのお話からでも楽しめる。
 個性豊かなニワトリたちが巻き起こすちょっとした騒ぎは、ユーモアたっぷり。勘違いやまぬけぶりが単純に楽しいし、シンプルなタッチの絵とあいまって、笑いを誘う。もともと置物だったこともあり、ニワトリたちの表情の変化は少ないのだが、だからこそ愛嬌があり、ほのぼのとした雰囲気をかもしだしている。人間を描いた絵はあまり絵本向きとはいえず、そこが唯一残念。でも、ニワトリやヒヨコの絵は、かわいらしいことこの上ない! 『ヒヨコもりは たいへん』に登場するたくさんのヒヨコの絵は、ピヨピヨという声が聞こえてきそうで、いつまでも眺めていたくなる。アニメ化しても楽しそうだ。
 大人目線の捉え方になるが、姉妹と思われるメンドリたちのやりとりは、人間の家族のようで、思わず笑みがこぼれてしまう。妹3人、弟1人の5人きょうだいで育ったカウリーの、家族のやりとりが反映されているのかもしれない。唯一のオンドリ、ルルの話でも、活躍するのは女房のシビルと、女性陣が生き生きとしているところも、このシリーズの魅力のひとつだろう。
 "Happy Hens" の置き物は、日本人の間でも人気があり、ネットショップで販売されている。そんな話題性もあるこのシリーズ、埋もれてしまってはもったいない。日本の読者に届けたいと、心から願う。

【作者紹介】
イヴォンヌ・サザランド(原案/絵)

 ニュージーランド南島のダニーデン郊外に住む工芸家。1980年代から、陶器のニワトリ "Happy Hens" の製作・販売を始める。ダニーデン名物の工芸品として人気を呼び、各国に輸出されるようになった。日本では、ダニーデンと姉妹都市の小樽で販売が開始され、サザランドも何度か訪問している。本シリーズは、その愛らしい陶器のニワトリたちの絵本化。サザランド唯一の絵本作品と思われる。

 

ジョイ・カウリー(文)

 いわずと知れた、ニュージーランド児童文学界を代表する作家。